MY NAME IS DREAMER
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↓の続きです。
例によってプロットのような拙い文です。
そして加地が可哀想なお話です。ご注意下さい。
完璧だった。
彼がいる練習室の扉を開けるまでは。
練習室の中には彼がいた。
そしてもうひとり。
「・・・つち・・・うら・・・」
自分の声が強張るのがわかる。
はっ、と弾かれたように二人の視線がこちらに向く。
土浦と、月森。
視線がこちらに向き二人の顔が見える。
あぁ。
その瞬間悟る。他人の感情の機微を感じとり、無駄に回る自分の頭に舌打ちしたくなる。
土浦の顔は『恥ずかしい所を見られた、でも直前までとても嬉しいことがあり、しかめ切れず少し紅潮して緩んでる』顔。
月森の顔は『突然の闖入者に驚いたものの、直前まで起きていたであろう自分至上幸福な出来事に感情や思考を処理しきれず、元々紅潮していたであろう顔は勢いよく赤面しパニックになっている』顔。
そして彼の手にはラッピングの施された何か。
土浦から渡されたであろう何か。
渡されたのはその何かだけではないだろう。たぶん何かに込められた言葉も。
そして僕が取るべき行動を僕の脳は教えてくれる。
邪魔者は立ち去るべきだ。
そう脳が伝えてくるけど、僕の体は簡単に動いてくれなかった。
それでも戸惑い揺れている彼の表情を見て、全身の力を振り絞って「ごめんね」と一言発する。
そこからは早かった。
物凄い速さで1歩室内に踏み込んだ足を後ろに運び、扉を閉め駆け出した。
早くしなければならなかった。
言葉を発したら感情が一気に発露してしまいそうになったから。涙まで出てきてしまったから。
そんな自分を見せたら、きっと彼を困らせてしまうから。
練習室から大分離れ、みっともなく上がった息に負けないくらいの鼓動が痛くて足を緩める。
しっかりと酸素が脳にも廻り始めると素直に思考も回り始める。
こんな時ばかりは鈍っていてくれたらいいのに。
すぐさま走り出す前の出来事が脳内で反芻される。
彼の顔、そしてもうひとりの彼の顔。
間違いなくあれは、告白の現場だったのだろう。
そしてその告白が実った現場。
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